九州住環境研究会

No.118 首相、気候サミット演説断られる!
高効率「石炭火力」で途上国支援を行ってCO2の排出は0にはならない。
石炭火力発電推進が支障となり、温暖化ガスの削減目標が不十分と判断された結果。

2019年12月25日更新


日本政府の温暖化に対する対応の甘さが露呈した。

深刻さを増す地球温暖化に対処するため、九月に米ニューヨークの国連本部で開かれた「気候行動サミット」で、日本政府が安倍首相の演説を要望したが、国連側から断られていたことが分かった。
かつては、京都議定書で世界をリードしてきた日本の環境対策だったがCO2の排出が特に多い石炭火力の推進が温暖化対策の目玉になる、日本の方針が支障になったといわれている。

主催したグテレス国連事務総長は開催に先立ち「美しい演説ではなく具体的な計画」を用意するよう求め、国連側は事前に各国の首脳にサミット出席を呼び掛けた。
共同通信によると、日本は、安倍首相が本年6月に議長を務めた20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)の結果を含めて、その成果を報告したい意向を伝えて協議したが、日本は、未だに石炭火力発電の利用を推進しているほか、温室効果ガスの排出削減目標の引き上げや、引き上げに相当する新たな取り組みを表明できない事が断られた理由だったという。自国のみならず「途上国での石炭火力発電建設に資金援助を続けていることも影響したようだ」と関係者は語っているという。

日本は6月に、温暖化対策の長期戦略をまとめ、今世紀後半のできるだけ早期に、排出を実質ゼロにする目標を掲げていたが、具体的な時期は示せなかった。策定過程で石炭火力発電の「長期的な全廃」案も示されたが、産業界出身の有識者委員の反発で全廃案から「依存度を引き下げる」という後退案が採択されていたという。

父小泉進次郎環境大臣も、全く期待外れに終始した。

気候行動サミットで演説した首脳らの多くが2050年までに排出を実質ゼロにする目標や、再生可能エネルギーの導入拡大、途上国への資金援助増額などを表明しているが、温暖化の影響を最も受け続けている日本の対応が、石炭火力の全廃どころか現在、日本における石炭火力発電所の増設計画が、1673万kW、30機となっていること(2018年3月末時点)。
さらに発展途上国に融資・援助付きで拡散させようとしていることに、世界に広がる若者の抗議活動を背景にした、スウェーデンのグレタ・トゥンベリさん(16)も演説し、抜本的な対策強化を迫った。

日本は小泉進次郎環境相が出席したが演説の機会はなく、全く、逆行する無策ぶりで存在感を示せない結果に終わった。これには、日本から参加した環境団体からも失望の声が上がり、環境団体FoEジャパンの深草亜悠美さんは「世界で脱石炭の流れが加速する中、国内の石炭利用と海外支援を続ける日本に国際社会が厳しい目を向けている証左だ。真剣に地球温暖化対策に取り組むのであれば、支援を直ちにやめ、国内でも段階的廃止に向けた工程表を立案すべきだ。再生可能エネルギーは大きく伸びており、石炭火力は資産価値が損なわれて使い道のない座礁資産となる可能性が高い。気候変動の影響で、国内でも巨大台風や豪雨による被害が甚大になっている。脱石炭は国民の利益になる」と憤りを見せていたという。

経済産業省「資源エネルギー庁」の弁明。

Q1・なぜ新たに発電設備を建設しようとしているのか?

◎日本全体で、火力発電の高効率化を進めようとしているためで、古くて発電効率の悪い火力発電に代えて「クリーンコール技術」を活用した発電効率の高い火力発電を導入することで、火力発電設備の新陳代謝を起こしCO2排出量も減らしていくことが必要と考えている。逆を言えば、現在の建設計画をすべて中止させてしまうと、古くて発電効率の悪い火力発電が残ったままになるおそれがある。


Q2・世界が脱炭素に進む中、石炭火力発電を輸出しているのは問題ではないか?

◎エネルギー源に完璧なものはなく、石炭を選ばざるを得ない国もあり、そうした国々の経済発展とCO2削減に貢献している。

◎完璧なエネルギー源は存在しない中で、世界には、どうしても石炭をエネルギー源のひとつとして選択せざるを得ない国が存在している。安定供給をおこなう「エネルギー安全保障」と共に「経済性」も重要である。

◎IEA(国際エネルギー機関)では、インド、東南アジア諸国の新興国は、経済発展と共に、今後も石炭火力発電のニーズが拡大する。新興国にとって、安く、安定的に採れる石炭は、引き続き、重要なエネルギーだ。

◎2017年に開催された「ASEAN+3エネルギー大臣会合」・「東アジアサミット」で、ASEAN諸国からは、エネルギー安全保障と同時にCO2削減にも貢献するクリーンな石炭火力発電技術について、積極的に活用して行きたいとの言及もあり、その導入のため金融面・技術面からも支援強化を求める声がある。

◎日本は、再生可能エネルギーや水素、排出したCO2を貯める「CCS」(二酸化炭素回収・貯留)技術や貯めて使う「CCUS」などを含んだ、さまざまなエネルギーの選択肢を各国に提案し、支援している。石炭火力発電を選ばざるを得ない国々に対しては、日本が持つ高効率発電技術の輸出をおこなっている。これは、途上国の発展に対する貢献とアジア地域全体の温暖化対策、大気汚染物質の削減の貢献にもなる。

◎日本で商用化されている最高効率の技術(USC:超々臨界圧)を、中国やインドといったアジアの国々と米国の石炭火力に適用するとCO2削減効果は約12億トン(11.8億トン)にのぼるという試算もある。これは、日本全体のCO2排出量(約13億トン)に匹敵する規模である。

以上が、日本の環境対策のまとめであるが、これを日本の言い訳に感じたのは、貴方や私だけでなく、世界中の人々がそう思っているようだ。

世界の抗議が「化石賞」の2度受賞という不名誉に。

◎2019年、スペイン・マドリードでの国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP)で、国際的環境NGO「気候行動ネットワーク」から地球温暖化対策に非協力国に贈られる「化石賞」を梶山経済産業相が「石炭火力発電など化石燃料の発電所は選択肢として残していきたい」と閣議後に述べた発言と現地で小泉環境相が「石炭政策について新たな展開を生むには至らなかった」と脱石炭への道筋を示さなかったスピーチに対し、2度の不名誉な「化石賞」が贈られた。

 

◎2011年の東日本大震災以降、原子力発電所がほとんど稼働できない状態が続いており、化石燃料発電への依存が高まっている日本の実情に対し、発展途上国の開発援助を名目に石炭火力を続けようという姑息さに世界からブーイングが浴びせられているのである。もう災害多発国という甘えは許されない。

 

住宅のZEH及び更なる高性能化が急務であると「九州住環境研究会」では考えています。