九州住環境研究会

No.151 「ZEH」が脱炭素社会の切り札になる?
今始まっているエネルギー革命は、地球と人類の未来に直結している!
「住生活基本計画」では、脱炭素の切り札として「ZEH」と「LCCM」を強調。

2021年5月24日更新

エネルギーの消費方法から、自分で造って使う時代に!

「住生活基本計画」の脱炭素の目標に向けて、最も強力な推進力は「ZEH」の普及です。イギリスなどでは新築住宅に「ZEH」が義務づけられるなど、この流れは、世界一の大気汚染国である中国を巻き込んで、すでに世界的な流れを形成しています。サハラ砂漠で、太陽光発電を行い、世界のエネルギーをまかなうためには、島根県程度の面積があれば実現できるというシミュレーションもあります。石油大国のサウジアラビア等でも砂漠での大規模な太陽光発電が始まっています。

現在、注目されている水素についても、太陽光以外に原料を必要としない太陽光発電でのグリーン水素の製造も計画され、実現性のハードルも年々低くなっています。現在、太陽光発電の要領で水素発生装置も開発され、水素蓄積技術などは、我が国が最も進んだ技術を保有しています。

「ZEH]に話を戻しますと、省エネ性能が高く、環境に優しく、高断熱の住宅では室内の温度を一定に保てる為、住宅が夏・冬共に快適になります。更に台風や地震で停電した場合も自家発電で災害に強い適応能力の高い住宅になります。こうしたことからも国策として「ZEH」の普及が求められているのです。

「LCCM住宅」の普及でようやく実現できる温暖化問題。

「LCC住宅」(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅)とは、使うエネルギーだけではなく、住宅の建設・解体まで、住宅に関わるライフ・サイクル全般の二酸化炭素の排出量を少なくし、更に住宅の長寿命化で、住宅ストックを多くし、世代間を超えて流通可能な長寿命住宅を建てることです。

現在のような25年程度しか持たない住宅は建てさせないで、100年以上の耐久性のある住宅造りに換えていく試みでもあります。耐震や省エネ、バリアフリー等を向上させる「リフォーム」や建て替えを促すことで、良質な住宅ストックの形成を進めると共に、国民の意識を底上げすることで、脱炭素社会の実現を加速度的に進めていく方針が示されています。

「空き家」の改修促進によって管理・除去・利活用の促進。

社会問題化している放置「空き家の状況に応じた適切な管理・排除・利活用の一体的推進」についても「住生活基本計画」では、良好な物件に関しては、「空き家・空き地バンク」を活用しながら改修を進め、セカンドハウスや複数拠点生活としての利用を促進することが明記されています。

もう一つの視点として「居住者・コミュニケーション」の重要性についても掲げられています。子育て世帯の減少や、高齢者世帯や生活保護世帯の増加という日本的な世帯の問題があり、人口減少問題からも
①「子供を産み育てやすい住まいの実現」
②「多様な世代が支え合い、高齢者等が健康で安心して暮らせるコミュニケーションの形成とまちづくり」
③「住宅確保配慮者が安心して暮らせるセーフティネット機能の整備」
の3つの目標が設定され、利便性が重視される共働き、子育て世帯に配慮した住宅取得の推進や良質な民間賃貸住宅のストック形成を進めることになっています。同時に高齢者が生活しやすいバリアフリー住宅の整備や物のインターネット化(IoT)技術を活用した高齢者管理・見守りなども推進されます。

自宅単位での取り組みだけでなく、子育て支援施設や公園、緑地の整備等も考えられています。福祉政策とも連携し、生活支援も行われることになっています。生活保護受給者などをはじめとする、住宅確保要配慮者の入居・生活支援も行われる予定になっています。日本社会と住宅の課題を踏まえ、多様な世代が安心して居住出来る環境を目指した新たな「住生活基本計画」は、21年度から30年度までの10年間の指針で、これを基本にして我が国の新しい住宅造りが始まります。

ヨーロッパの住宅「複数拠点化」が生まれた理由?

住宅の二酸化炭素削減は、地球温暖化対策の国際的な枠組である「パリ協定」の達成のため、今まで主役の座から外れていたアメリカがバイデン大統領の登場で、その主役の座に返り咲こうとしています。トランプ前大統領と共に温暖化・大気汚染対策から逃れていた、中国を含めた40カ国以上の国際会議がアメリカ主導で計画されています。

先進国と後進国を使い分けて来た中国も近年の世界情勢では、使い分けも出来なくなり、ようやく身の丈にあった対策を講じる必要性を感じ始めているようです。わがままな一国主義から自らが言う大国として、世界と強調し環境問題に取り組むべき態勢を整えつつあるようです。

住宅の「省エネルギー基準」義務化から、日本の住宅も逃れられない。

「住生活基本計画」では「空き家」対策として、住宅の「複数拠点化」という選択肢を掲げていますが、これはヨーロッパの「別荘」とも通じる考え方です。例えば、ローマに住むイタリア人は、裕福でなくても「冬の家や夏の家」という別荘を持っています。夏のバーケーションには「海辺にある夏の家」へ、冬には雪山に近い「冬の家」へという様に住宅が「複数拠点化」しているわけですが、この場合、ほとんどが夫婦の親の家です。例えば、東京で暮らす夫が鹿児島出身で、妻が青森出身の場合、親の家を相続し、鹿児島の夫の家は「夏の家」、青森の妻の家は「冬の家」(逆もあり、使い方は自由)というように「別荘として使うことも可能です。

ヨーロッパの場合は、住宅寿命が長いので、このような使い方も可能になるわけですが、高性能住宅であれば日本でも実現できます。兄弟がいる場合、相続者がいなければ話し合って、共同で別荘を持った気になれば、親の家は「複数拠点化」も可能になるわけです。こうした考え方が下地にあれば、同居は叶わなくても、孫達も自由に故郷の親の家に、祖父母を尋ねることが普通になります。

今までのような25年程度の寿命しかない住宅では、不可能ですから「住生活基本計画」は、このようなことも仮定して、今後の住宅を建てて下さいと指針を示しているわけです。九州住環境研究会、加盟工務店は、家族が元気に暮らせる「100年住宅」をお建て致します。