九州住環境研究会

No.36 高性能・長寿住宅が一般化すれば建てかえから住みかえの時代が来ます。
長期的に高性能が持続する住宅は、将来の資産になります。
これからの住宅は資産を建てる?

2012年12月1日更新


我が国の住宅性能は、設備優先で決定されている?

次号で詳しく紹介しますが「都市の低炭素化の促進に関する法律(都市低炭素化促進法)による認定低炭素住宅も開始され、認定長期優良住宅などと共に、低炭素化に向けて住宅の寿命もエネルギー消費にも応分の気配りがされてきたように見えますが、実際には「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の推進事業の様に、住宅性能よりもむしろ住宅設備による住宅の低炭素化が先行しているため、いびつな形で補助金制度が施行されているように思えてなりません。
例えば「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の補助金制度は、最大350万円が支給されましたが、太陽光発電や燃料電池、エネファームなどの創エネルギー設備は補助対象とはならず、事前に評定機関によって認定された低炭素対策となる設備機器類だけが半額の補助対象となっています。
最大350万円の補助金を得るためには700万円もの住宅設備を行うことになります。
さらに太陽光発電などの創エネ設備をプラスすると実際には、1000万円に近い設備が必要となるのではないでしょうか。現実的には、最大限での補助金の支給は少ないにせよ、住宅設備の耐用年数や保証期間がほとんどの場合、10年を限度にしていることを考えると、350万円の補助金を得たばかりに、10年後からは、最大1000万円弱の設備更新を行わなければならない事態も発生します。
この中にはLED照明など、長期的に使用できるものも含まれていますから、実際には全てが対象にならないにしても、消耗する設備については、逐次更新していく必要があります。
このように、我が国の省エネルギーや低炭素住宅への補助金制度は、そのまま現実的な住宅に応用されていくとは思えませんが、このままの状態では設備機器に頼りすぎる住宅が我が国の未来の住宅になってしまうのではないかという危惧があります。本年改正された省エネルギー基準は、次世代省エネルギー基準+α基準のいうならば、150棟以上の施工業者に義務づけられた「トップランナー基準」ですから、これで十分だとはとても言えないと思われます。

2012年の新基準は、満足できる住宅基準なのか?

2012年の改正省エネルギー基準は、一次エネルギーの消費量によって住宅の性能が表示されることになりました。
ご存知のように一次エネルギーとは石油やガス等のエネルギーのことで、私達は、実際には一次エネルギーを加工して造られた電力を使用しているわけですが、それを環境破壊の原因や地球温暖化の原因となる一次エネルギーに換算することにより、二酸化炭素の放出量やエネルギー消費の実態等、環境破壊となる数値を、より見えやすくした国際基準に準じたものです。
評価の方法も標準的な住宅のモデルを設定し、そのモデルを100とした場合、それから10%の削減をクリアすることで、目標とする省エネルギーを達成したと評価されます。今までの評価方法では、住宅から逃げる熱の量、すなわち熱損失係数(Q値)で示してきたものから、実際のエネルギーの消費量から住宅性能を求めるものとして、少しは評価できますが、現実的には1999年の次世代省エネルギー基準をそのまま新基準にスライドさせただけで13年前の基準値が少しも性能的に向上しているわけではありません。
国の説明でも次世代省エネ基準の読みかえである。といっているように、住宅性能そのものは、現状のままに据え置かれた形になっています。
エコポイントやトップランナー基準で省エネ基準の達成率もようやく半分くらいになっている現状で、対応が遅れている中小工務店の性能アップの為に据え置かれた事になっている様ですが、2020年に義務化される省エネルギー基準は、この基準が義務化されるわけですから、益々高性能になっている欧米の性能基準と比較すると、問題にもならないほど、不十分な基準ではないのかというのが、松下孝建設の偽らざる思いです。

本当に求められるのは、住宅性能による省エネ?

省エネルギーの問題は、様々な方面からのアプローチが必要だと思いますが、基本的には住宅そのものの性能アップが必要です。高性能化した住宅に高性能設備を取付けることではじめて、本物の高度な省エネルギー・低炭素が実現できると思われるからです。また、住宅の価値と省エネルギーは全く別の問題のように考えられるかも知れませんが、実際には省エネルギーで生活できる住宅は、長寿命住宅になります。それは住宅の中で使用するエネルギーが少ないほど、住宅に与えるストレスが少なくなるからです。これから求められる住宅は、少なくとも100年の長寿命が必要です。その点は長期優良住宅の定期的なリフォームで200年の寿命を求めているのは正当なことだと思います。これから住宅を建てる場合は、資産価値の高い住宅でなければなりません。資産価値の高い住宅とは住宅自体がエネルギー消費の少ない住宅性能を持っていなければなりません。その様な住宅は、子供や孫達の幸せを保証してくれます。松下孝建設は、今後もそうした住宅を造り続けて参ります。