九州住環境研究会

No.44 本当に資産価値の高い住宅とは?
認定低炭素住宅と認定長期優良住宅の税制優遇措置。
2020年の省エネ基準適合住宅が最低基準の住宅。

2013年7月16日更新


2012年の新基準は、満足できる住宅基準なのか?

2012年度に、住宅の性能基準が見直され一次エネルギーの消費量によって住宅の性能が表示されることになりました。 ご存知のように一次エネルギーとは石油やガス等のエネルギーのことで実際に一次エネルギーを使用するということではなく、実際には電気などの一次エネルギーを加工して造られた電力を使用しているわけですが、それを環境破壊の原因や地球温暖化の原因となる一次エネルギーに換算することにより、よりエネルギー消費の実態と環境破壊の数値をより見えやすくしたものと考えられます。従って、評価の方法も標準的な住宅モデルを設定し、そのモデルを100とした場合、それから10%の削減をクリアすることで、目標とする省エネルギーを達成したと評価されます。今までの評価方法では、住宅そのものから逃げる熱の量、すなわち熱損失係数(Q値)で示してきたものから、実際のエネルギーの使用量から住宅性能を求めるものとして評価できますが、現実的には1999年の次世代省エネルギー基準をそのまま新基準にスライドさせただけで13年前の基準値が少しも性能的に向上しているわけではありません。No.33「我慢強さがあだとなる脳血管疾患の現実。」でも紹介しているように、無暖房室の室温10℃の室温危険値をようやくクリアできる様な温熱環境でしかない、というのが現状の基準なのです。2020年には義務化されることになっている「省エネルギー基準」も、この基準が義務化の対象基準になりますが、欧米の性能基準と比較すると我が国の基準値では、まだまだ不十分ではないのかというのが、大方の高性能住宅施工業者の見解ではないかと考えられます。九州住環境研究会は、この基準では不十分ではないかと考えています。

我が国の住宅性能は、設備優先で決定されている?

「都市の低炭素化の促進に関する法律(都市低炭素化促進法)による認定低炭素住宅も開始され、認定長期優良住宅などと共に、低炭素化に向けて住宅の寿命もエネルギー消費にも応分の気配りがされているように見えますが、実際には「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の推進事業の様に、住宅性能よりもむしろ住宅設備による住宅の低炭素化がはかられているため、非常にいびつな形で補助金制度が実行されているように思えてしまいます。
例えば「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」に対しては、最大350万円の補助金が支給されますが、太陽光発電や燃料電池、エネファームなどの創エネルギーは取付けは必要なものの評価対象とはならず、事前に評価対象として認定された設備を含む、その他の低炭素対策機器の装備の半額が補助金の対象となっています。最大350万円の補助金を得るためには、700万円もの住宅設備を行うことになります。さらに創エネ設備をプラスすると実際には、1000万円に近い設備が必要となるのではないでしょうか。
現実的には、最大限での補助金の支給は少ないにせよ、住宅設備の耐用年数や保証期間がほとんどの場合、10年を限度にしていることを考えると、350万円の補助金を得たばかりに、10年後からは、最大1000万円弱の設備更新を行わなければならない事態も発生します。この中にはLED照明など、長期的に使用できるものも含まれていますから、実際には全てが対象にならないにしても、消耗する設備については、逐次更新していく必要があります。このように、我が国の省エネルギーや低炭素住宅への補助金制度は、そのまま現実的な住宅に応用されていくとは思えませんが、このままの状態では設備機器に頼りすぎる住宅が我が国の未来の住宅になってしまうのではないかという危惧があります。先にも述べたように、改正された省エネルギー基準は、次世代省エネルギー基準を踏襲した+α基準の「トップランナー基準」ですから、欧米基準と比較した場合、決して満足できる基準ではありません。

本当に求められるのは、住宅性能による省エネ?

省エネルギーの問題は、様々な方面からのアプローチが必要だと思いますが、基本的には住宅そのものの性能アップが必要です。高性能化した住宅に高性能設備を取付けることではじめて、本物の高度な省エネルギー・低炭素が実現できると思われるからです。また、住宅の価値と省エネルギーは全く別の問題のように考えられるかも知れませんが、実際には省エネルギーで生活できる住宅は、長寿命住宅になります。それは住宅の中で使用するエネルギーが少ないほど、住宅に与えるストレスが少なくなるからです。これから求められる住宅は、少なくとも100年の長寿命が必要です。その点は長期優良住宅の定期的なリフォームで200年の寿命を求めているのは正当なことだと思います。これから住宅を建てる場合は、資産価値の高い住宅でなければなりません。資産価値の高い住宅とは住宅自体がエネルギー消費の少ない住宅性能を持っていなければなりません。その様な住宅は、子供や孫達の幸せを保証してくれます。九州住環境研究会では今後もそうした住宅を造って参ります。