2008年12月6日(土)・7日(日)、2001年・国土交通省の「建築物に係わる省エネルギー判断基準」の改正に伴う 九州住環境会員工務店と所属従業員を対象に緊急セミナー開催。

「建築物に係わる省エネルギー判断基準」の改正に関する策定委員でもある北海道立、北方建築総合研究所の鈴木大隆先生と近畿大学理工学部、建築学部・環境工学研究室、岩前篤準教授による特別セミナーを開催しました。

両先生の鹿児島県来県の目的は、南方型高性能住宅がどの様な条件下で、どの様に建てられているか、視察のために松下孝建設の住宅現場を個人的に視察されるためでした。

この様な機会は、あまり無いことから両先生にお願いして緊急セミナーを開催して頂きました。

当日は、熊本県、宮崎県の九州住環境研究会の会員と共に、松下孝建設の工務・設計、営業担当者の総勢30名位のセミナーとなりました。

北海道立北方建築総合研究所 鈴木大隆先生

北海道立、北方建築総合研究所 鈴木大隆先生の講演概要。

2009年4月1日に改正される現在ヒアリング中の「建築物に係わる省エネルギー判断基準」の改正要点を解説して頂きました。

さらに新築住宅に関する税制面での優遇措置や、今後予測される行政面での様々な変更箇所。また、バッチシステムなど高性能住宅の表示制度などこれから検討課題となる様々な次章に関して、わかりやすい解説で話して頂きました。

地球環境の保全の立場からも、ますます住宅の高性能化が求められている現状、並びに、高性能化の足かせとなっている大型集合住宅や建て売り住宅に対する省エネルギー基準の届け出制度による高性能化など、様々な観点から高性能化の必要性が語られました。今回は、松下孝建設の現場を抜き打ちで数ヶ所ご覧いただきましたが、施工性の高さや高性能化に対する取り組みなどに高い関心が示され、施工性の高さにお褒めの言葉を頂きました。

近畿大学理工学部 建築学部・環境工学研究室
岩前篤准教授

近畿大学理工学部、建築学部・環境工学研究室、岩前篤准教授の講演内容。

岩前先生は、環境工学の学者の立場から「高性能住宅と健康」について話して頂きました。

温度差の少ない家で医療費が変わる?

高断熱・高気密住宅の特徴は住宅内の温度差が少ないこと、温度差が少ない住宅では、医療費が変わる?という現実的な特徴がありということです。その仕組みがどの様になっているのか、ということから講演が始まりました。

省エネルギー基準の枠組みの変更

ここにおいて現行の省エネルギー基準からどの様に、2009年基準が変更になるのかが解説されました。

  1. 気密基準は建築基準法にゆだねられ、新基準からは外れる。基準を緩めるのではなく、V地域以南でC=5cm2等の数値では意味がない。順当な断熱施工を行うだけでもクリアが可能であるから記載の意味がないとの趣旨でした。

基準値を超える例

  1. 高効率給湯器やエアコンの出現で基準値の垣根が低くなった旨が具体的な事例で示されました。

断熱性能の国際比較

  1. 我が国の断熱性能が国際的にはどの様な水準にあるのか、時代の変遷と共に解説して頂きました。
  2. 2009年基準で我が国の住宅性能がどの程度になるのか、国際水準との比較で解説して頂きました。

住まいの果たすべき役割

  1. 住まいとはどの様な役割を担うものか、根元的な住宅論が示され、住まいというものに対する考え方の重要性が語られました。
  2. 生命に対する責任と環境に対する住まいの責任が示されました。

実態:寝室の温湿度

  1. 成人病の発症が最も多い寝室についての温室と湿度の重要性について解説して頂きました。
  2. 寒冷地ほど寝室の室温が高くなり、温暖な地域ほど寝室の温度が低くなり、逆に湿度が高くなる実態が示されました。心臓疾患や脳卒中の危険性が寒冷地から温暖地に移行している現状が、問題は温暖な地域の住宅性能にあることが解明されました。

寝室の温度

  1. 寝室と連動するトイレなどの空間とに、著しい温度差がある場合、脳卒中や様々な成人病疾患の原因となることが解明されてきている。
  2. 寝室の温度管理の大切さの認識の重要性が示されました。

医療費の増加

  1. 国民所得の伸びと連動してきた医療費は、国民取得の伸びが止まってもさらに伸び続けている現状が示され、医療費の抑制のためにも住宅の高性能化が必要なことが示されました。

医療費の症状別内訳

  1. 医療費の増加の原因が、高齢化と連動した疾病にあることが示され、予防医学の立場からも高性能住宅の重要性が認識されています。

温度と健康の因果関係

  1. 外気温と件候補因果関係につて解説されました。住宅の外気温度に対するシェルター機能の重要性が語られました。

季節感変動の見られない死因

  1. 温度変化に関係ない死因についても、密接に季節感で変動があることが解析されました。

季節感変動の明らかな死因

  1. 季節感に起因する病気の原因が殆ど成人病といわれる加齢と関係がある実態が示され、長寿のためには住宅性能が重要であることが裏付けられました。

月別死亡数:事故による死亡

  1. 事故も又温熱環境には関係がないように見えても実際には、かなり大きな因果関係になっている実態が示されました。

神戸市救急搬送記録について

  1. 神戸市の救急搬送記録に見る記録の解析でも、温度変化に起因する成人病が最も多く搬送されている実態が解明されました。

室温と予想救急発動件数

  1. 室温の低下が招く成人病の発症予測、住宅の温度環境で病気が予防できることも予測されています。室温を高く保つことで3〜4万件もの救急出動を減らすことも可能だということです。

自然室温の上昇

  1. 断熱材の厚みと自然室温上昇が示され、断熱施工の重要性が明示されました。

高断熱住宅の健康影響度調査、第一次の概要

  1. 高断熱住宅にした場合と、高断熱住宅以前の住宅との住み心地の違いをアンケート調査した実態が解説されました。

高断熱住宅居住前後の変化

  1. 高断熱と換気の関係についての調査が示され、高断熱にした場合、気密性能も当然高くなるために、その対策の必要性が語られました。

以上、岩前先生のセミナーは、「住宅と健康」という我々が蔑ろに出来ない内容でしたが、温熱環境に優れた高性能住宅が、長寿を約束し、また医療費の大幅な削減効果を持つものであることが解説されました。

今回の参加者がこの講演を元に、どの様に住宅の建築や販売に結びつけて行かれるのか、非常に楽しみなセミナーになりました。

次回は、建て主の皆様のためにもこの様なセミナーを企画したいと思っております。その節には、是非ご参加下さいますようお願い致します。

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