九州住環境研究会

ハイブリッド・エコ・ハートQ

成人病とヒートショック。

室内の温度環境の変化による危険性について。

急激な温度差が引き起こすヒートショック。

「ハイブリッド・エコ・ハートQ」では、住宅の中に温度差を造らない全室暖房を最も重要なポイントとして 上げてきました。これは、住宅の中に温度差を造ると、恐ろしいヒートショックが起こってしまうからです。 ヒートショックは、心臓病やリュウマチ、脳疾患等の成人病の発症原因にもなります。ヒートショックとは、 暖められた部屋から急に冷たい廊下などに出たとき、生体反応として体温を一定に保つために、 血管が急激に収縮する作用をいいます。この時、血圧が130程度の健康な人でも急激に30ポイントも上昇し、 160になりますが高齢者で高血圧の症状がある180の方ならば、一気に210の危険水準を突破してしまいます。 そのために、急激に心臓や脳内血管がダメージを受け、血管が切れて成人病が発症してしまうのです。

全室暖房は、風呂やトイレ・廊下・寝室なども、居室と同じ温度でなければなりません。 トイレでのいきみは、それだけでも血圧を上げてしまいますし、風呂場でも寒い脱衣所で脳卒中などが 多く発症するのは、全てヒートショックが原因となっているのです。

■心疾患の死亡率(人口10万対)の年次推移
心疾患の死亡率(人口10万対)の年次推移
■脳血管疾患の死亡率(人口10万対)の年次推移
脳血管疾患の死亡率(人口10万対)の年次推移

注:全脳血管疾患は、脳出血と脳梗塞とその他の脳血管疾患のである。くも膜下出血は、その他の脳血管疾患の再掲である。

資料:厚生省「人口動態統計」

一日のうちで血圧が最も低くなるのは就寝後の1~2時間だといわれます。寝ている状態から 急に立ち上がると、それだけでも血圧は10ポイント以上、上昇します。高血圧症や心臓疾患のある方、 高齢者が、 就寝中に尿意を催して暖かい布団から出て、冷たい部屋の中で立ち上がろうとする時、 最も危険な瞬間なのです。この温度変化による急激な血圧の上昇これが「ヒートショック」の正体です。 家族の健康を守るためには、全室暖房で家中の温度差を極力小さくした空間とすることが基本原則となります。

感覚温度と健康について。
■感覚温度(無風時)
気温 相対湿度 体感温度
30°C 100% 30°C
30°C 80% 28°C
30°C 60% 26.5°C
30°C 40% 25°C

私たちは、同じ温度条件であっても相対湿度を下げることによって体感温度は、低く感じます。 それが夏のクーラー使用時における除湿による効果として先に解説しました。 この様なことが可能なのは高断熱・高気密の高性能住宅だからです。夏の高気温には、 室内の温度を機械的に下げるよりも湿度を低くすることで、外との温度差が少なく高齢者や幼児にも 負担の少ない健康的な冷房になります。

■脳卒中死亡率の気温に対する回帰路線
脳卒中死亡率の気温に対する回帰路線

厚生省が発表している「脳卒中死亡率の気温に対する回帰直線によると、 東京や大阪に比べ、 寒冷地の長野・秋田は死亡率が非常にに高くなっています。これは、単純に寒冷地と温暖地の温度差に よるものと考えられますが、寒冷地とはいえない群馬、鹿児島の脳卒中死亡者の数も少なくはありません。
塩分の多い食生活とか様々な要因も考えられますが、さらに寒い北海道では、 逆に死亡率が全国平均よりも低くなっています。
これは、住宅性能が高く、断熱性や気密性による温度差が少ない住宅の性能の違いにある事が、 最近の医学と建築学の研究から明らかにされています。住宅性能が確かで全室暖房による室内の温度差が 少ない住宅が、ヒートショックを防ぎ、一年を通じて温度差による負担を身体に掛けないことによるものといえます。